パンにとって必要な材料はたったの4つ
粉 水 塩 酵母
4つの材料から考えるパンのつくりのお話。
なお題名で言っている基本的なパンとは、このコラムでは小麦粉を使った白いパンのことを指します。
一般的にパンの中には砂糖や卵、牛乳が入っているイメージを持つ人も多いと思いますが、これらは追加で入れる材料であって必要な物ではありません。 (自分が行っていたドイツのパン学校では基本の材料、追加の材料の二つに分けて教わりました。)
ここでは詳細を省きますが、卵や砂糖を入れることによって風味が良くなったり、発酵が良くなったりといろいろな効果があるので悪いと言っているわけではありません。
必要な4つの材料毎の役割
・粉(小麦粉)
小麦粉の中にあるグリアジンとグルテニンという2種類のタンパク質が水と合わさり結合することでグルテンができます。 発酵の過程で発生したガスをグルテンがパン生地の中に留めることでパンが膨らみます。 グルテンの構造は建物で例えることが多いのですが、グリアジンが柱のような役割を持ち、グルテニンが壁のような役割を持っています。 グルテンは強すぎると硬いパンになってしまうし、弱いとパンは簡単に潰れてしまうので丁度いいところで捏ね終わるのが大事です。
デンプンは小麦粉中や酵母の酵素によってブドウ糖やモルト糖などに分解されます。 酵母が活動する栄養になったり、パンの色付きにも影響があるので香ばしさや食感も酵素の具合で変わってきます。 また加熱によりゲル状になり もっちりとした食感や焼成後のパンの水分保持の役割があります。
・水
水はグルテンを作る上で欠かせない物ですがその他にも大事な役割があります。 酵母は水に溶けた栄養(ブドウ糖等)しか食べることができないため一定量以上の水が生地には必要です。 水分量が少ない生地は発酵が遅く、多い場合は早くなります。また生地の硬さ調整や入れる水の温度を変えることで最終的な生地の温度調整をするなど水は他の材料との仲介役を担っています。
・塩
パンの味を塩味によって引き締めてくれるのは想像できますが、グルテンを強化する働きや酵母の働きを抑える効果もあります。 なので塩は入れすぎると色付きがよくなりすぎ、パンのボリュームも小さくなってしまいます。 塩無しの場合だとパンのボリュームが小さく、色がつかず、パン自体の味も薄くなります。
※酵母の発酵や酵素分解のバランスを整えると塩無しのパンも可能で、濃いめの料理に合わせることができます※
塩の量による変化は酵母や酵素の働きと密接に関わりがあるためこの量が正解というのどんなパンを作るかで大きく変わってきます。
・酵母
酵母は一般に流通しているイースト以外にも味輝酵母やワイン酵母など様々な種類があるので、このコラムではあえて酵母と書いています。 これら酵母の共通点はデンプンを糖に変える酵素分解や糖を栄養源にして増える細胞分裂、その後活発に行われる発酵になります。 発酵の過程ではブドウ糖を分解して二酸化炭素とアルコールを出し、二酸化炭素はパンを膨らませ、アルコールは焼成時に蒸発してパンに風味や香りを与えます。
酵母は水との関わりが大きく、浸透圧によって水を吸いよせてしまう塩や砂糖には注意が必要です。 少ない量だと生地やパンに良い影響を与えますが、一定量を超えると発酵を阻害してしまいます。 またバターやマーガリンなどの油脂が増えると水の量が相対的に減ってしまうため発酵を妨げます。
以上の4つがパンに必要な最低限の材料とその役割でした。
味輝はこの配合の中で小麦粉をブレンドし味輝酵母の発酵や酵素分解の度合いを見極めながらパンを作っています。
もちろんこの4つ以外の材料を使っているパンもありますが、酵母の発酵を妨げない量にとどめて味輝酵母や国産小麦の味を楽しんでもらえるように作っています。